- 介護保険の家屋改修ではどんなことができるの?
- 介護保険を利用して手すりを付けたいけど、どんな手続きが必要なの?
- 家屋改修の具体例を教えてほしい。
家屋改修は高額になりがちで、家計に大きな負担をもたらすことも。
しかし、介護保険を上手に活用すれば、必要な改修を手頃な費用で実現できるかもしれません。
この記事では、介護保険利用のポイントを初心者にもわかりやすく説明し、家族が快適に過ごせる家づくりをサポートします。
具体的な家屋改修の事例も挙げていますので、イメージを付けて頂ければと思います。
介護保険とは?
介護保険の仕組み
介護保険制度は、日本における高齢者や障害を持つ人々が必要とする介護サービスを支援するための社会保障制度です。
この制度の目的は、これらの人々が自立した日常生活を送れるように支援することにあります。
ここでは、介護保険の仕組みを簡潔に説明します。
- 対象者:65歳以上の方、または特定の疾病を持つ65歳未満の方が、サービスの利用対象となります。
- 保険料
- 介護保険の費用は、被保険者が支払う保険料と、国や自治体からの公的支援によって賄われます。保険料は、年齢や収入に応じて異なります。
- サービスの種類
- 介護保険では、在宅介護(訪問介護、デイサービス、短期入所など)と施設介護(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など)の両方をカバーしています。
福祉用具のレンタルや家屋改修の助成も含まれます。
- 利用までの流れ
- 介護が必要と判断された場合、まず市町村に申請して介護認定の審査を受けます。
審査の結果、要支援または要介護の認定を受けると、認定に応じた介護サービスが利用できます。
利用者は、サービス利用にあたって自己負担(原則としてサービス費用の1割から3割)を支払います。
≫手続きから利用まで丁寧に解説:介護保険のすべて
- 選択と自己負担
- 利用者は自己のニーズに合わせてサービスを選ぶことができますが、サービスの種類や提供施設によって自己負担額が異なる場合があります。
介護保険制度を通じて、必要な介護サービスを適切に受けることで、高齢者や障害を持つ人々が安心して生活できる環境が整います。
家屋改修をカバーする介護保険の範囲
介護保険の住宅改修費支給制度は、要介護者の自立した在宅生活を支援するために設けられた制度です。
手すりの設置や段差解消など、様々な住宅改修工事が対象となり、費用の一部が支給されます。ただし、支給回数や金額に一定の制限があるため、ケアマネージャーとの事前の相談が大切です。
- 対象者: 要介護認定を受けている人
- 支給の制限:1人につき1回の支給が原則。ただし、状況に応じて複数回の支給が可能。
- 支給額の上限は20万円
- 介護保険で家屋改修をするメリット
- ・費用の一部が補助される
・安全で自立した生活が可能になる
・段差の解消やスロープの設置など、生活しやすい環境に改善できる
・介護者の負担も軽減され、要介護者の自立した生活が支援される
- 対象となる家屋改修
- (1)手すりの取付け
(2)段差の解消
(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
(4)引き戸等への扉の取替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
≫出典:介護保険における住宅改修 厚生労働省
家屋改修でできること
改修の例とその目的
- 手すりの設置:階段や廊下、上がり框などに設置し、安全な動作を獲得します。
- 段差の解消:玄関前の段差をスロープにし、安全な動作と介護の負担を軽減します。
- 浴室改修:手すりの設置、床を滑りにくい素材への変更、浴槽の変更など安全な入浴を助けます。
- 居室の段差解消:廊下と部屋の間の段差にスロープを設置し、つまづいて転倒する危険をなくします。
- 屋外の通路の改修:不整地や飛び石などを、平らにすることで安全に移動できるようにします。
- 廊下幅の拡張:狭い廊下を広げ、車いすや介助者がスムーズに移動できるようにする。
- トイレの改修:和式トイレ⇔洋式トイレ、便器の向きの変更など安全なトイレの使用を助けます。
改修による生活の向上事例
イメージがしやすいように、具体的にお身体の状況を大枠で想定した改修例の一部を挙げています。
足腰の力が弱く、手での支えないと立ち座りが難しい方
- トイレの立ち座りに使用する手すりを設置する。
- 浴室への出入り、浴槽をまたぐ、浴槽への出入りのときに使用できる手すりを設置する。
- 階段の上り下りに使用する手すりを設置する。
家の外・中ともに車椅子を使用して移動する方
- 玄関までにスロープを施工する。
- スムーズに移動できるようにするため、廊下と部屋の間の段差を解消する。
- 車椅子での操作がしやすいように、ドアを引き戸から開き戸へ変更する。
- 車椅子が通れる廊下幅に拡張する。
両にざに痛みがあり、ひざの曲げ伸ばしが大変で足が上がりにくい方
- 玄関の出入りの際に使用できる手すりを設置する。
- 足先がつまづかないように、廊下と部屋の間の段差を解消する。
- 便座を和式から洋式に変更する。
- トイレの立ち座りに使用する手すりを設置する。
お身体の状況はもちろん、自宅環境・ご家族のサポートなどで改修箇所は変わります。
家屋改修の申請方法
必要な手続きの流れ
介護保険の住宅改修費支給を受けるには、事前の申請と承認が必要です。
事前・事後申請時の提出書類
事前申請時の書類
①住宅改修費支給申請書
②工事費見積り書(複数事業所からの見積もり提出を促進)
③住宅改修が必要な理由書(※)
④住宅改修後の完成予定の状態が分かるもの
(日付入り写真又は住宅の間取り図など)
※理由書の作成者:介護支援専門員、地域包括支援センター担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上その他これに準ずる資格等を有する者
事後申請時の書類
⑤住宅改修に要した費用に係る領収書
⑥工事費内訳書
⑦住宅改修の完成後の状態を確認できる書類
(便所、浴室、廊下等の箇所ごとの改修前及び改修後それぞれの写真とし、原則として撮影日がわかるもの)、
⑧住宅の所有者の承諾書
(住宅改修した住宅の所有者が当該利用者でない場合)
※やむを得ない事情がある場合については、住宅改修が完了した後に、①及び③を提出することができる。
事前の相談と申請、工事完了後の報告が重要なポイントです。
ケアマネジャーや市区町村の担当者と連携しながら、手続きを踏むことが大切です。
介護保険の住宅改修における自己負担額
自己負担額の計算
住宅改修の総費用に対して、自己負担割合が決まっています。
自己負担割合は、要介護度や所得に応じて10%、15%、20%のいずれかになります。
例えば、総費用が200,000円の場合
▶自己負担10%なら20,000円
▶自己負担15%なら30,000円
▶自己負担20%なら40,000円
となります。
自己負担額の節約のコツ
- 事前に自治体に相談し、補助金の対象となる工事内容を確認する。
- 複数の業者から見積もりを取り、費用を抑える。
- ケアマネジャーと相談し、必要最小限の工事内容を検討する。
- 自治体独自の補助制度も活用する。
- リフォーム業者と相談し、費用対効果の高い工夫をする。
介護保険の住宅改修では自己負担額が発生しますが、事前の情報収集や工夫によって、負担を最小限に抑えることができます。
ケアマネジャーや自治体、リフォーム業者と連携しながら、最適な改修計画を立てましょう。
よくある質問とその回答
家屋改修を行う上での注意点
Q1. 介護保険の住宅改修で自己負担はどのくらいですか?
A: 介護保険の住宅改修では、自己負担割合が10%、15%、20%のいずれかになります。
例えば、総費用が200,000円の場合、自己負担は20,000円~40,000円となります。
自己負担割合は、要介護度や所得に応じて決まります。
Q2. 住宅改修の補助金はどのように活用できますか?
A: 事前に自治体に相談し、補助金の対象となる工事内容を確認することが大切です。
また、複数の業者から見積もりを取り、費用を抑えることも重要です。
ケアマネジャーと相談して、必要最小限の工事内容を検討するのも良いでしょう。
自治体独自の補助制度も活用できる場合があります。
Q3. 有料老人ホームでも住宅改修は可能ですか?
A: 有料老人ホームの居室は高齢者向けに設計されているため、一般的な利用を想定していない場合があります。
そのため、有料老人ホームでの住宅改修は可能ですが、制限がある可能性があります。
Q4. 手すりの取り付けはどのように行えばよいですか?
A: 一体型の手すり設置は支給対象ですが、選択制のオプションは原則支給対象外となります。
また、既存の手すりの劣化や問題を理由とした取り替えは、補助の対象外となる場合があります。
補助金の受け取り方や期間について
Q1. 介護保険の住宅改修費はどのように受け取れますか?
A: 介護保険の住宅改修費は、事前に自治体に申請し、承認を得る必要があります。
申請には、見積書や工事内容の説明書などの書類が必要です。
承認されると、工事完了後に改修費の一部が支給されます。
自己負担分は工事費用から差し引かれた金額となります。
Q2. 補助金の上限額はどのくらいですか?
A: 介護保険の住宅改修費の上限額は、原則として20万円となっています。
ただし、自治体によって上限額が異なる場合があるので、事前に確認することが大切です。
また、上限額を超える部分は自己負担となります。
Q3. 補助金の申請はいつまでに行えばよいですか?
A: 住宅改修の工事を行う前に、必ず事前に自治体に申請する必要があります。
工事着手前に申請し、承認を得てから工事を行うようにしましょう。
事後申請は認められない場合が多いので注意が必要です。
Q4. 補助金の支給はどのように行われますか?
A: 住宅改修費の支給は、工事完了後に行われます。
工事完了後に領収書などの必要書類を自治体に提出し、審査を受ける必要があります。
審査が通れば、自己負担分を差し引いた金額が支給されます。
まとめと今後のステップ
家屋改修の重要性の再確認
介護が必要な家族を支えるためには、自宅の環境を整備することが重要です。
自宅の改修は、以下のような効果が期待できます。
- 家族の日常生活動作(ADL)の向上
- 介護者の負担軽減
- 自立した生活の継続
- 事故や転倒のリスク低減
例えば、段差の解消や手すりの設置、洗面所や浴室の改修などです。
介護保険の自宅改修費用の補助を活用することで、家族の生活の質を高め、安全で快適な生活環境を整備することができます。
家屋改修を成功させるためのチェックリスト
事前準備
- ケアマネージャーや自治体に事前相談し、補助金の対象となる改修工事の内容を確認する。
- 必要書類(見積書、理由書など)を事前に準備する。
- 改修工事の内容と費用について、ケアマネジャーや専門家に相談する。
申請手続き
- 自治体に住宅改修費の申請書を提出する。
- 申請書には、改修理由書や見積書、写真などの必要書類を添付する。
- 申請が承認されるまで工事を開始しない。
費用の支払い
- 工事完了後に領収書を受け取る。
- 自治体に工事完了報告書を提出し、補助金の支給を受ける。
- 自己負担分の費用を工事業者に支払う。
事後確認
- 改修工事の完成状況を確認する。
- 補助金の支給額に問題がないか確認する。
- 必要に応じて、ケアマネジャーや自治体に相談する。
事前準備から申請、工事完了まで、丁寧に手続きを進めることが大切です。
また、改修ではなく”レンタル”という手段もあるのでケアマネージャーと相談してください。