- 年齢を重ね、これから急な体調不良が出てくることへの不安がある。
- 普段は元気でも、急な体調不良やケガをした時の対処はどうすればいい?
- 事前に準備することで、もしもの時あせらずに済むものは?
年齢を重ねるにつれて、突然の急な体調の変化や、発熱、ケガをする可能性が高くなります。
こうした状況にも、具体的な対策を普段の生活からとっておくことで、不安が軽減します。
では、どのような準備が必要になるのか?
私は作業療法士として、今まで数百人の高齢者を支援し、退院後の自宅での生活環境を整えるサポートをしてきました。
その経験を活かし、この記事では急な体調不良に備えるための5つの効果的な対策をご紹介します。
この記事を読むことで、いざという時に安心して対処できる知識と準備が整います。
万が一に備えることは、高齢者が自宅での生活を安心して続けるための、材料の一つになります。
高齢者の体調不良に備える重要性とは?
1.高齢者の体調不良が起こりやすい理由
高齢者は、加齢に伴って免疫力や体力が低下していきます。
このため、季節の変わり目や気温の急激な変化に体が対応しにくくなり、若い頃であれば軽い風邪で済んだような症状が、重症化しやすくなります。
特に冬場や夏場の気温差が大きい時期は、体調不良を引き起こすリスクが高まります。
高齢者の多くは慢性的な持病を抱えていることが多く、持病の悪化は、急な体調不良が起こりやすくなり、日常生活に影響を与える可能性があります。
2.緊急時に慌てないために知っておきたいこと
突然の体調不良は、年齢に関わらず誰にでも起こり得るものです。
しかし、特に高齢者の場合、体力や免疫力の低下により症状が急激に進行することが多いため、迅速かつ的確な対応が求められます。
時間が経過するほど、症状が悪化して命に関わる場合もあるため、家族や周囲の人が慌てずに行動できるように、事前の準備が大切です。
まず、緊急時に連絡すべき相手や、医療機関の連絡先を把握しておくことが大切です。
緊急時に慌てないための準備ステップ
1.緊急連絡先の確認と共有
緊急時に慌てず対応するためには、かかりつけ医や家族、近隣の知り合いとの連絡先を事前に確認し、いつでもすぐに連絡できる状態にしておくことが大切です。
特に高齢者の場合、体調が急変した際には迅速な対応が必要になるため、これらの連絡先を一箇所にまとめ、家族や介護者がすぐにアクセスできるようにしておきましょう。
連絡先は、紙に書いて冷蔵庫や玄関など、目に付きやすい場所に貼っておくのも有効です。
また、緊急時に備えて、近隣に住む信頼できる知り合いにも連絡を取っておくことで、いざという時の支援がスムーズに行えるようになります。
もし自分で動けなくても、わかりやすい場所にまとめておけば、すぐに見つけてもらえます。
2.救急キットと必要書類の準備
高齢者の急な体調不良に備えるためには、救急キットと必要書類をあらかじめ準備しておくことが重要です。
特に、持病や服用中の薬、アレルギー情報をまとめたメモを用意し、緊急時にすぐ医療機関に提出できる状態にしておくと、迅速かつ的確な治療を受けやすくなります。
このメモには、定期的に通院しているかかりつけ医や服薬中の薬名、アレルギー反応が起こる食物や薬物の情報を詳細に記載しましょう。
緊急連絡先や保険証のコピーも一緒に保管しておくと便利です。
内服履歴をまとめる”お薬手帳”に情報をまとめておくもの、おすすめです。
高齢者の体調急変時に役立つ具体的対策4選
1.医療機関との連携を強化する
高齢者の急な体調不良に備えるためには、医療機関との事前連携を強化しておくことが非常に重要です。
特に、かかりつけ医へは定期的な受診で、健康状態を把握してもらいましょう。そうすることで、緊急時にスムーズな対応が可能になります。
受診時には、持病の進行状況や新たな症状があれば相談し、治療方針や服薬内容を確認しておきましょう。
2.内服忘れを防止する
高齢者が毎日の薬を正しく服用することは、健康維持や病状の悪化を防ぐために非常に重要です。
しかし、加齢による記憶力の低下や複数の薬を服用している場合、飲み忘れが起こりやすくなります。
そこで、飲み忘れを防ぐための工夫やグッズの活用をご紹介します。
①内服カレンダー
お薬の管理といえばピルケースが一般的ですが、高齢者の内服管理には内服カレンダーの方がよりお勧めです。
ピルケースは小さな仕切りが多く、視力や手の使いにくさで管理が難しいことがあります。
一方、内服カレンダーは視覚的にわかりやすく、日々の服薬状況を一目で確認できるため、飲み忘れを防ぎやすく、管理が簡単です。
一週間単位で視覚的に管理できますので、定期的なサービスやご家族の訪問がある方には特におすすめです。
薬局や、100円均一のお店でも販売されています。
②仕切りケース
3~4つに仕切られたケースに朝・昼・晩(就寝前)の薬方入れて、翌朝か最後の内服が終わったら翌日分をセッチングして管理します。
一日単位で視覚的に管理できる方法です。
飲み終わった薬包をケースに入れることで、確実に飲み切ったことが確認できます。
③アラームや通知アプリの活用
薬を飲む時間を通知してくれるアプリも効果的です。
スマートフォンやタブレットにインストールしておくと、アラームで服薬時間を知らせてくれるので、忙しい日常の中でも安心です。
食事の前後は忘れにくいですが、食間に飲むお薬には特に効果的です。
可能であれば、お薬の一包化がおススメです!
3.日常の健康モニタリングの重要性
高齢者の健康を守るためには、日々の健康モニタリングが重要です。
血圧、体温、体重などを定期的に測定し、そのデータを記録することで、体調の変化をいち早く察知し、異常があれば早めに対応することが可能です。
具体的な記録方法
- 手書きの健康日記
- 測定した数値を手書きでノートに記録する方法は、手軽で視覚的にも過去のデータを振り返りやすい利点があります。
血圧、体温、体重を毎日決まった時間に測定し、日付とともに記録していくことで、異常を早期に発見しやすくなります。
- ②スマートウォッチや健康管理アプリの活用
- スマートウォッチは、心拍数や体温を自動的に測定し、データをリアルタイムでアプリに記録してくれるため便利です。
血圧計や体温計と連動するアプリもあり、手書きよりもデータの管理が効率的です。
定期的な受診時の活用
日々の健康記録は、定期的な医師の診察時にも大変役立ちます。
自宅で測定したデータを医師に共有することで、病気の早期発見や治療方針の決定に役立てることができます。
受診時に記録したものを持参することで、効果的な治療・連携が取りやすくなります。
4.福祉機器や支援サービスを活用する
高齢者の突然の体調不良に備えるためには、福祉機器や支援サービスを積極的に活用することがも有効です。
緊急時に迅速に対応できるデバイスや、地域の見守りサービスを利用することで、高齢者本人だけでなく家族の安心感も高まります。
緊急対応できるデバイスの活用
- スマートウォッチ
- スマートウォッチは、心拍数や体温をリアルタイムで測定し、異常があればアラートを発する機能が付いています。
多くのスマートウォッチには、緊急時にボタン一つで家族や救急サービスに連絡できる機能も搭載されています。
- 健康管理アプリ
- 健康管理アプリは、日々の血圧、心拍、歩数などを記録し、異常が見られた際にアラートを発する機能が備わっています。
地域の見守りサービスの活用
- 地域の見守りサービス
- 地域では、高齢者をサポートする見守りサービスが数多く提供されています。
例えば、自治体や地域のボランティア団体が行う「定期的な安否確認」や「訪問サービス」は、一人暮らしの高齢者にとって安心感を与える大きなサポートです。
定期的な訪問や電話連絡を通じて健康状態を確認し、異常があればすぐに対応してくれるため、緊急時に大きな助けとなります。
- 緊急通報システム
- 自治体や民間企業が提供する緊急通報システムも、突然の体調不良時に役立ちます。
緊急時にボタン一つで専門スタッフが対応し、必要に応じて救急車を手配したり、家族に連絡してくれる仕組みです。
一人暮らしや日中に家族が不在の家庭では、福祉機器や見守りサービスを導入することで、万が一の時にも迅速な対応が可能となり、家族の負担を軽減することができます。
高齢者の安全を確保し、安心して生活できる環境づくりに、これらのサービスを積極的に取り入れましょう。
≫【高齢者がもっと自立できる!】|宅配サービスと自動家電が変える新しい暮らし方
日常生活でのリスク管理と予防策
1. 日常的にできる転倒予防対策6選
高齢者にとって、転倒は大きな健康リスクになります。ケガをするのは一瞬ですが、治療には長い時間が必要です。
転倒予防といえば手すりの設置が一番に思い浮かぶと思います。しかし、家屋状況によっては難しいこともありますし手間もあります。
そこで、家屋改修をしなくても、簡単に実践できる転倒予防対策を紹介します。
1. 家の中の段差をなくす
家の中にある小さな段差が転倒の原因になることがあります。
簡単にできる対策として、段差解消用のスロープやマットを設置することで、段差を解消できます。
これらのグッズはホームセンターや通販で手に入れられ、設置も簡単です。
実は部屋と廊下の境目や玄関の段差などの小さな段差こそ、つまずきやすいポイントです。
2. 滑りやすい場所に手で支えられるようにする
滑りやすい場所には手すりを設置するのが一般的ですが、家屋の状態によっては設置が難しいこともあります。
そこで、棚やカウンターの配置を工夫することも効果的です。
ふらついた時に手で支えられるよう、棚やカウンターを適切な位置に配置して、安全に歩ける環境を整えましょう。
3. すべり止めシートの活用
滑りやすい床やフローリングには、すべり止めシートを敷くのもおすすめです。
特に玄関やキッチンなどの水気の多い場所や、段差がない平らな部分でも足を滑らせやすい場所に効果的です。
厚みのある・滑りやすいカーペットや絨毯は、つまずきやすくなるため撤去することをお勧めします。
4. 室内の照明を明るくする
暗い場所では足元が見えにくくなり、つまずきやすくなります。
そこで、家の中の照明を明るくし、足元をしっかりと見えるようにすることも転倒予防の一つです。
廊下や階段、玄関などに足元を照らすライトを設置したり、感知式のライトを導入するのも良い対策です。
5. 散らかりを減らす
床に置かれた物に足を引っ掛けて転倒するケースも多いです。
日常的に部屋を整理し、床に物を置かない習慣をつけることが大切です。
ケーブルやコードが床を這っている場合は、まとめて壁に固定するなどして、歩行の邪魔にならないよう工夫しましょう。
6. 室内履きの工夫
フローリングやタイルなど滑りやすい床材の場合は、かかとが覆われており、滑りにくい素材の室内履きを使用することで転倒を防ぐことができます。
”スリッパ”は転倒リスクが高く、お勧めしません。
室内用の靴に抵抗がある方は、滑り止め付きの靴下でもいいと思います。
2.食事・水分補給の管理と重要性
高齢者にとって、日々の食事と水分補給は健康維持のために大切です。
年齢を重ねるにつれて、脱水症状や栄養不足のリスクが高まり、これが体調不良や病気の原因になることがあります。
ここでは、高齢者にとってのバランスの取れた食事と適切な水分補給の重要性を解説し、具体的な飲水量についても触れます。
栄養バランスの取れた食事の重要性
高齢者は、筋力低下や代謝の変化により、栄養不足に陥りやすい傾向があります。
特に、タンパク質、ビタミン、ミネラルの不足が問題です。これらは筋肉の維持や免疫力を高めるために欠かせない栄養素です。
- タンパク質
- 筋肉量を維持し、転倒予防や体力の維持に必要です。魚、肉、卵、大豆製品などから摂取しましょう。
一食で手のひらに乗る程度の量の摂取量が目安です。
- ビタミン・ミネラル
- 免疫力を高め、病気の予防に効果的です。
特にビタミンD(骨を強くする)、カルシウム(骨の健康に寄与)、マグネシウム(神経機能を助ける)を含む食品をバランス良く取り入れましょう。
定期的な水分補給の重要性
高齢者は若い世代と比べて喉の渇きを感じにくく、脱水症状に陥りやすいです。
特に、夏場や暖房が効いた冬場の室内では、体から知らないうちに水分が失われます。
脱水症状は、体温調節の不具合や血圧の低下、最悪の場合は意識障害を引き起こすことがあります。
そのため、日常的な水分補給が欠かせません。
体系別の具体的な飲水量
一般的に、健康な成人が1日に必要な水分量は体重1kgあたり約30~40mlとされていますが、高齢者の場合は、活動量や体調に応じて調整が必要です。
腎臓や心臓に不調がある方は、飲水量を医師と相談しましょう。
水分補給の工夫
- こまめな飲水
一度に大量に飲むのではなく、1回200ml程度を1日に何度も摂ることが望ましいです。
目安として、食事ごとに1杯程度の水分を摂るよう心がけましょう。 - 水以外の選択肢
高齢者は冷たい水が苦手な方も多いので、常温の水や麦茶、カフェインの少ないハーブティーなども効果的です。
スープやフルーツなど、水分の多い食べ物も水分補給の一環として取り入れると良いでしょう。
スポーツドリンクやジュースなどは、糖質が高いので摂りすぎには要注意です。
家族ができるサポートと連携のコツ
1.家族間での役割分担と連絡体制をつくる
家族が高齢者をサポートする際、スムーズな連携がとても大切です。
突然の体調不良や緊急時に備えて、家族間での情報共有や役割分担をあらかじめ決めておくことで、負担の軽減や安心感が生まれ、緊急時の対応も素早く行えます。
LINEグループやファミリー用の共有カレンダーを使って、病院の予約日や食事内容、日々の体調などの情報を簡単に共有するのも良いアイデアです。
連絡がスムーズにできるように、緊急連絡先も全員がすぐにアクセスできる状態にしておくと安心です。
特に、高齢者の一番近隣に住んでいる方が窓口になることが多いです。
お一人の方に負担が集中しないよう、ご家族で支え合って支援体制ができると良いと思います。
2.地域の支援やサポートサービスの活用
高齢者が突然体調不良を起こした際、家族だけでは対応が難しいこともあります。
そんな時に役立つのが、地域で提供されている支援サービスや在宅医療・介護サービスです。
地域で提供されている支援サービス
- 地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者やその家族に対して、さまざまな相談や支援を行う場所です。
体調不良や急な介護のニーズがある場合、地域包括支援センターに相談することで、必要な支援サービスを紹介してもらえます。
- 見守りサービス
地域には、定期的に高齢者の安否を確認する「見守りサービス」を提供している自治体やボランティア団体があります。
これに登録しておけば、万が一の体調不良時に、迅速にサポートが受けられる体制が整います。
在宅医療・介護サービスの活用
- 訪問医療
訪問医療サービスを利用すれば、高齢者の自宅に医師や看護師が訪問し、必要な治療やケアを提供してくれます。
特に急な体調不良で外出が難しい場合、在宅で医療を受けることができるのは大変便利です。 - 訪問介護
訪問介護サービスでは、介護士が自宅に訪問し、生活支援や身体介護を行います。
食事の準備やお風呂の手伝い、日常生活のサポートを受けることで、家族の負担を軽減し、高齢者が安心して生活できるようになります。 - デイサービス
デイサービスを利用すると、日中に高齢者が外出してリハビリや社会活動を行うことができます。
これにより、家族が日中の負担を軽減でき、また高齢者自身の健康維持にも繋がります。